
2025年4月28日
〜岡田光信× UNERI × AgeWellJapanの未来対談 〜
AgeWellJapanは、インパクトスタートアップとしての今後の展望を見据え、個人投資家・岡田光信氏、ならびに社会課題解決型スタートアップの支援を行う株式会社UNERIの河合将樹氏と対談を実施しました。本対談では、社会課題解決とビジネス成長の両立を目指すスタートアップの役割や、今後の可能性について意見を交わしました。
「老人と宇宙」から始まった出会いと出資
赤木:「私の人生のテーマは老人と宇宙です。出資させてください。」IMPACT STARTUP SUMMIT 2024で、突然目の前に現れ、そう声をかけてきたのが岡田さんでした。今でも鮮明に覚えています。
岡田:「老人と宇宙」は、私の人生の主題であり、最先端の分野だと思っています。あの日、何の迷いもなく、AgeWellJapanへの出資を決めました。日本だけでなく、世界中で社会課題は複雑かつ多様化しています。私は、解決できる課題は民間の力で積極的に取り組むべきだと考えています。だからこそ、社会課題の解決に挑むインパクトスタートアップを心から応援していますし、成長を心から願っています。
社会課題に価格をつけるという挑戦
赤木:ありがとうございます。岡田さんは「宇宙ごみ」という分野で業界を牽引していますが、事業者としてインパクトスタートアップをどう見ていますか。
岡田:「これは社会課題だ」と人々が認識するには、時間がかかります。 加えて、解決策を提供して、 そこに価格をつけるのはとても難しい作業です。私は、12年前に「宇宙ごみを掃除します」という誰が聞いても良くわからない状態から、事業を始めました。そこから、世の中にまだない技術を開発し、価格を設定しました。今では、G7(先進7カ国)や国連で議論されるほどグローバルアジェンダになっています。近年インパクトスタートアップへの注目が高まっており、どの会社も解決策を定義し、独自の解決策と価値提供を模索しています。私はこの状況を素晴らしいと思っています。
インパクトスタートアップの転換点と指標の重要性
赤木:河合さんは、インパクトスタートアップを対象とした投資ファンド「UNERI Capital」を設立していますが、現状をどのように捉えていますか。
河合:インパクトスタートアップは、20年に一度の大きな転換期を迎えています。2022年に一般社団法人インパクトスタートアップ協会が設立し、日本でこの概念や言葉が急速に普及しました。市場規模は世界で約740兆円、日本全体でも約17兆円にまで広がっています。一方で、未上場のスタートアップに流れているお金は、日本全体の約1%と少ないのが現状です。インパクトスタートアップにどれだけ多様なお金が集まるかが、日本の未来にとっても重要だと考えています。そのためにも、企業は事業が社会や環境にどう影響を与えるかという指標(インパクト指標)を自分たちで考え、測定し、改善し続けることが大事です。
「価値を形に、言葉を力に」
赤木:なるほど。インパクトスタートアップとしてのAgeWellJapanの印象はどうでしょうか。
岡田:私は、どんな企業も最終的な評価は財務(ファイナンシャル)で決まると思っています。「人々が最後まで前向きに生きていける社会」が、AgeWellJapanがサービスを通じて提供する社会的価値ですよね。インパクトスタートアップは、この価値をお金に変えることで初めて喜びが生まれると思っています。だからこそ、AgeWellJapanがこれを実現しているのはすごいことです。
河合:私はAgeWellJapanが言葉を生み出し、それを社会に広げているところに魅力を感じています。「Age-Well」のように、概念を言葉にすることで、人の関心が集まり、事例も生まれます。言葉には人を動かす力があると思います。
魔法はない。爪楊枝から社会的渦へ
赤木:AgeWellJapanにとって、取り組むべきことが見えてきました。事業成長とファイナンスの両立、インパクト指標の言語化、そして「Age-Well」という価値観を社会に広げていくことが大事ですね。最初は理解されなかった「Age-Well」という言葉も、少しずつ共感が広がっているように感じます。「宇宙ごみ」のように、社会に広く認知され、事業として成長するためには、今後どのような取り組みが必要でしょうか。
岡田:残念ながら魔法はありません。継続こそが本当の力です。私も、最初は50メートルのプールを爪楊枝で回すような挑戦でした。でも、続けることで渦が生まれ、道具もお玉や大きなヘラへと変わっていきました。回し方は変わってるかもしれませんが、ただ続けてきました。渦が広がるのは、周囲が語ってくれるようになったときです。なので、今やっていることを続けて、赤木さんの知らないところでAgeWellJapanが語られる世界を目指してください。大切なのは、届け続けることです。
グローバル展開の可能性。韓国から世界へ
赤木:ありがとうございます。私が日頃から意識していることは、どんなときでも面白がる姿を周囲に見せることです。話を聞いて、楽しそうなところに人は集まるし、そういう場所にこそ未来が生まれると改めて感じました。これからもその姿勢を大事にしていきたいと思います。いずれはグローバルにも「Age-Well」の価値観を広げていきたいと考えています。そこで河合さんに、今後のグローバル展開の可能性について伺いたいです。
河合:AgeWellJapanのモデルや哲学は他国でも十分通用する可能性があり、大きな希望を感じています。その第一歩として、日韓連携が現実的だと考えています。韓国はエイジテックへの関心も高く、類似した人口動態、時差がないことなど利点が多いです。韓国からアジアへと展開していくのが理想だと思います。
赤木:現在、日本は世界で最も高齢化が進んでいる国ですが、将来的には韓国がそれを上回ると言われています。シニア世代の「Age-Well」を考える上で、文化や家族観は非常に大切だと思います。日本と韓国は、家族に対する価値観が近い部分が多く、実際に海外からの問い合わせも韓国が最も多いです。そういった肌感覚からも相性の良さを感じていて、「まずは韓国、そしてグローバルへ」という流れは、とても現実的だと考えています。最後に、メッセージをお願いします。
超高齢社会への希望を胸に
岡田:超高齢社会への不安の声をよく耳にしますが、私は人口が減少してもピラミッド型の人口構成になれば大きな問題はないと私は考えています。ただ、それには少なくとも50年はかかります。だからこそ、シニアの方がパッションを持って日々の生活を楽しむことが大事です。その姿は周りに影響を与え、やがて大きな波となって広がっていく。私はその力を信じています。一緒に盛り上げていきましょう。
河合:シニアが好奇心を持って長生きし、同時に経済も回る社会が大切だと考えています。宗教や文化によって老いの捉え方は異なりますが、AgeWellJaoanが描く新しい超高齢社会のモデルは、きっと世界にも通じるはずです。一緒に実現していきましょう。
赤木:お二人ともありがとうございます。これからも、よろしくお願いします。
岡田 光信 氏
株式会社アストロスケールホールディングス 創業者 / 一般社団法人インパクトスタートアップ協会 理事。”宇宙ごみ(スペースデブリ)除去を含む軌道上サービス”という未開拓の社会課題に挑む世界的企業、アストロスケールの創業者。シンガポールでの創業を経て、現在は日本を中心にグローバルに事業を展開。宇宙の持続可能性(Space Sustainability)を掲げたビジネスモデルは国際的にも高く評価され、G7や国連での議論にも影響を与えている。近年は一般社団法人インパクトスタートアップ協会の理事として、次世代の社会課題解決型スタートアップの育成・支援にも注力。民間の力による変革の可能性を信じ、支援・発信・政策提言など多方面で活動している。
株式会社UNERI
株式会社UNERIは、「誰もが自分の信じる道を歩める社会の実現」をパーパスとする、社会課題解決型スタートアップの支援会社。主な事業として、創業期の起業家/イノベーター育成事業、行政連携事業、投資事業等を展開。代表の河合氏は、金融庁主催「インパクト・コンソーシアム」の分科会メンバーを務めるほか、Forbes JAPANが主催する『Forbes JAPAN 30 UNDER 30(世界を変える30歳未満30人)』のBUSINESS & FINANCE & IMPACT部門に選出されており、当分野において国内外で累計約120回の登壇実績を持つ。また、業界最大規模のカンファレンス「IMPACT SHIFT」の発起人でもあり、国内外の業界関係者の皆様が集う場の創出も行っている。