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2023年8月23日 AgeWellJapan Lab

【シニア傾聴インタビュー_vol.2】生涯現役のヒントは、行動を続けること。

Vol.2 「生涯現役のヒントは、行動を続けること。」植田茂夫さん

 AgeWellJapan Labでは月に1回、挑戦と発見を通じてポジティブに歳を重ねる”Age-Well”を体現されている方へのインタビューをお届け。Age-Wellな生き方を発信していきます。

 今回も、横浜・二俣川駅の多世代が集うコミュニティスペースであり、AgeWellJapan Labの拠点でもある「モットバ!FUTAMATA RIVER LIBRARY」に通う、植田茂夫(うえだ・しげお)さんにインタビュー。

 毎日モットバ!に通う他、日々の運動にコーラスやシニアクラブ等多方面で活躍されている植田さん。90歳という歳を全く感じさせない植田さんの「Age-Well」を作るヒントに迫りました。

毎日10,000歩、楽しく歩き続ける。

荒生:インタビュアー)植田さん、本日はよろしくお願い致します!私の中で植田さんは「毎日欠かさず10,000歩あるいている」というイメージがあるのですが、なぜ毎日歩き続けることが出来るのか、その秘訣を教えて下さい。

植田さん)今日も既に16,000歩歩いてきました。ただ、健康のために歩くというのは後付けなんです。あくまで最初は「運動」ではなく、楽しんでいたというかね。68歳で女房を亡くしてから、地元の歩く会に参加するようになりました。それが段々と習慣化して歩くようになりましたね。引っ越しを機に一人で歩き続けよう、と思い、今でも続けています。雨の日も傘を差しながら歩くようになりました。

荒生)雨の日も1万歩あるいているんですね!

植田さん)そうなんです。最初の頃は「雨だから、やめた」という気持ちになることもあったんですけど、今は「あ、雨だ。どれくらい降ってるかなあ。まあ行ける。」という気持ち。もう習慣ですから。歩くのも全然苦ではないです。毎日好きな音楽を聴きながら散歩を楽しんでいます。

歩いた記録をつけてくれる横浜市のウォーキングポイントにも参加しています。全年齢が対象の歩数ランキングでは6万人中500位~1200位くらい。80歳の頃は1日で3万歩くらい歩いていたこともありました。記録として残るのは嬉しいですね。

荒生)「習慣にする」というのは本当に大事なことですよね。毎日の散歩のほかに、習慣として行っていることはあるのですか?

植田さん)二俣川シニアダンディーズ、というコーラスの会に参加しています。平均年齢82歳の男性コーラスです。私が一番年上ですね。昔は音痴で音楽はあまり好きではなかったのですが、6・7年前にお酒を飲める友達が欲しいと思ったのをきっかけにカラオケ教室に通うようになりました。はじめは歌になってるかどうかわからないから、とにかく「心臓」で歌ってたんですよね。「だいぶ歌らしくなりましたね」と、先生に言われると嬉しかったですね。やっぱり人間って、褒められると良い気持ちになりますから。

荒生)確かに、自分を肯定してくれる人の近くに行くのってとても大事ですよね。家に一人でこもっていると、どうしても自分を否定しがちになってしまいますし。

植田さん)そうなんです。外に出て誰かに褒めてもらう環境にいることは、やっぱりいいなと思う。昔は、批判したり命令したり、上から目線の上下関係が普通でしたが、今も同年代の人と話していると、昔の自慢話だったりとか上から目線で指摘する人が多かったりするんです。でも、否定的な喋る方をするとやっぱりよくないんですよ。前向きで肯定的な形で話す方が、話す方も聞く方も良い。これが最近特に実感することの一つです。ポジティブなんて言葉は使わなかったですからね。ここ10年くらい、よく使うようになりました。

荒生)確かに、伝統的な価値観においては素直に相手を褒めるよりも厳しく育てる側面があり、特に男性だとその傾向があるように思えるのですが、植田さんがポジティブな話し方を心掛けるようになったきっかけは何でしょうか?

植田さん)若い人と話すのが大きい。これですね。10年ほど前までは若い人としゃべる機会がなかったんですよ。老人会は、私と同じくらいの年齢の人か、それ以上の人しかいないんですよね。先ほども言った通り、古い人間はとにかく自分のことを話すことが多い。そして、何か意見を言えば怒られるんですよね。でも、あなた方のような若い人と話すと、同じ立場で話ができる。年齢の差はあるけど、対等というか。若い人のいるコミュニティに入ったのが一番の変化のきっかけでしたね。今はモットバ!に通い、スタッフや他の会員と交流していますが、モットバ!にいらっしゃる他の会員も、自分より若い人が多い。でも、彼らのことも先輩みたいに思っている。素直に相手を尊敬して対等な立場に接したい気持ちになれたことは、少し成長したと思ったりするんです。

あと、最近は聞き上手も意識するようになりました。昔は自分が喋ることが多かったけど、こういう場所に来てより聞くことの大切さに気付いた。よく相手の話を聞いて、上手な質問をすれば、会話を楽しむことができますね。また、最近考えていることは「迷惑」という言葉の意味。「迷惑」って、相手がどう受け取るかなんですよ。自分の感覚で相手にとって迷惑かどうかを決めるのは難しいですね。だから、相手がどう感じるのかを常に意識するということが必要でしょう。子どもを育てていた時は、ただ「人に迷惑をかけてはいけない」と言っていましたが。

だから、モットバ!みたいに若い人と関われる場所は、私にとっては素晴らしい居場所でもあるんです。

荒生)そうですよね。こうした場所は、むしろ私たち若い世代にとっても良い場所であると思っています。学校のことや将来のことなど、目先のことばかりに夢中になり過ぎてしまう私たちにとって、少し俯瞰した目線でアドバイスをして下さる。いや、アドバイスというよりもお話を聞いて会話をして下さる感覚なんですけど、その中に実は生きるヒントのエッセンスが詰まっているというか。私たちにとってもありがたい場所ですね。

まずは、行動に移すことが大事です。

荒生)植田さんはモットバ!で普段どんなことをされているのですか?

植田さん)勉強や作業をしていますね。3年くらい前からスマホの勉強をはじめ、スタッフや会員に一から教えてもらって、ラインとかFacebookとかインターネットが使えるようになった。最近はPCの勉強をしているから、wordやexcelで童謡からクラシックまでの曲名集を作ったり、CDをPCに取り込んでまとめたり、それをジャンルごとに分けて整理したりして。好きなことと勉強したいことを組み合わせて楽しんでいます。また、録音したラジオ深夜放送を自分用にまとめています。音楽、曲名、作曲者名、演奏者名、歌手名等をスマホで調べて記録する作業をしているんです。

モットバ!は学校だと思っています。ここにきていると、時間が決まっているからあれもこれも手を出すことなく、一つのことに集中できる。家で一人でするのとは違うから。作業中はお互い喋るわけじゃないけど時間を共有しているような感覚。作業が一段落して、会員やスタッフと話し合うことができるのも嬉しいです。

荒生)90歳でデジタル機器にも果敢に取り組む方、なかなかいらっしゃらないですよ!尽きない好奇心が本当に素敵です。

植田さん)本当はまだまだ欲があって。色んなイベントに参加してみたいんです。とにかく、新しいことや変わったことを知れる機会があれば、とにかく参加してみたい気持ちが強い。

「何でも行動に移す」ということは大切にしています。なにかやりたい、と思っても動かないで「ああでもない、こうでもない」って考えてたら、何も進まないんですね。まず、家を出ちゃう。ドアを開けて一歩出ればね、何かが起きるから。とにかく動いてみますね。

失敗するかもしれないのに一歩踏み出すのは怖くもありますが、やらないで失敗するよりも何かに挑戦して失敗する方がよい。もちろん、良い結果が出る方が良いですけど、悪かったとしても、次どうするべきかが分かるから、得ることも大きい。

30代の頃、私は公務員だったんです。当時、民間の企業に転職する話があって。周りからは大反対を受けたんですけど、その時も「失敗したらどうしよう」よりも、「まずは行ってみて考える」という考え方で転職を決断しました。新しい生活がスタートすると楽しかった。結果は、成功でしたね。

だから、前から何でも挑戦する気質はあったのかもしれませんが、きちんと意識するようになったのはここ最近です。

荒生)「まずは一歩を踏み出す」、これが大事にしている価値観なんですね。お話を聴いていると、植田さん、前しか見ていない!と思わされます。

目標は生涯現役

荒生)最近、人生100年時代なんて言われていますが、これについてはどうお考えですか?

植田さん)やはり、運動・食事・社会参加の3つが大事だと思っているので、これには気を付けています。毎朝1万歩あるく。3食必ず残さず食べる、コミュニティに所属する。特に大事なのは社会参加だと思っています。社会に所属すると「やらなきゃいけないこと」が発生するんです。あれしなきゃいけない、これしなきゃいけない。それが脳トレ的な側面もあって良いと思っています。何より、社会参加を通して好きなことをすることが心の安らぎでもあり、人との交流でもあったり、いろいろな面で良いことがありますからね。

私が気の毒だなと思うことがあります。ショッピングモールのソファーに座ってただただじっとしていたり寝ていたりする人。特に男性に多いですね。奥さんに外に出かけて来なさいって言われているんだろうなあと。また、役職を持っていた男性は、引退したら閉じこもっちゃうことが多いですね。

社会参加する場所がなかったら、自分で場や会合を創っちゃえばよい。とにかく、自分で行動していくことが大事ですね。社会参加の幅も広いから、それぞれの形を探して行くのが良いと思いますね。特に、こういう社会の変化が激しい時代では、若い人と交流することが必要です。社会参加しないと若い人と付き合わなくなるから。

荒生)これからさらに挑戦してみたいことはありますか?

植田さん)100歳まで生きるとして、あと10年でどれだけのことができるか逆算しているんですよ。歌も上手になりたいし、今wordとexcelでまとめているものをさらに発展させて「音楽全集」を作りたい。本にできたらいいな、なんて夢もあります。まだまだ勉強しなきゃいけないと思います。あとは書道にも興味があります。字が上手になりたいですね。老人会のイベントにももっと参加したいです。

だから、100歳まで動けるようにしたいです。生涯現役が目標。

とはいえ、常に緊張状態じゃよくないから。自分にも他人にも「頑張れ!」とは言いすぎず、毎日を楽しんでいきたいです。毎日が人生。人生は、1日1日の積み重ねですから。

荒生)常に先を見つめる植田さん、かっこいいです。改めて、本日はありがとうございました!

対話後記

初めて参加したこの傾聴インタビュー。活発に活動しまさにAge-Wellの体現者である植田さんのお話を聞くたびに、文字でのみ理解していた「Age-Well」の輪郭が徐々に浮き出てきて色がついていくような感覚でした。植田さんが大事にされている「まず一歩を踏み出す」「場をつくる」「どんな人とも対等に向きあう」「好奇心を大切にする」、これは年齢関係なく重要であり、70歳年が離れている私にもとっても大きく関係することです。インタビュアーとしての立場と同じくらい、一人の大学生として学びの多い時間になりました。インタビュー、というよりは「笑いの絶えない会話のキャッチボール」が出来たこの時間は、植田さんの優しさと温かさがあってこそ。自分だけでなく話し相手の感性も豊かにするAge-Wellな生き方が表れていると感じました。

(インタビュー・編集 荒生真優)