Copyright © 2023 AgeWellJapan inc. All Rights Reserved.

News

お知らせ

2023年8月29日 AgeWellJapan Lab

【事業者の傾聴インタビュー_vol.1】来世で挑戦したいと思ったことが今世でできること、それがAge-Well

 AgeWellJapan Labでは月に1回、挑戦と発見を通じてポジティブに歳を重ねる”Age-Well”を体現されている方、シニアの”Age-Well”な生き方を創る事業者へのインタビューをお届け。Age-Wellな生き方のヒントを発信していきます。

 今回は、彫刻家・衣装デザイナー・カスタムブランドプロデューサー・映画プロデューサー・企業の経営戦略アドバイザーなど、多岐に渡る活動をされるアーティストKiNG氏にインタビュー。

 ご自身のアーティスト活動に加えて、お父様である彫刻家の佐々木幸四郎氏のプロデュースや、多摩美術大学時代の恩師である石井厚生氏とのyoutubeコラボレーションなど、多世代を巻き込んだKiNG氏ならではのアーティスト活動から、”Age-Well”な生き方を紐解きます。

来世で挑戦したいと思ったことが今世でできること、それがAge-Well

AgeWellJapan代表・赤木円香(以下、赤木):本日はよろしくお願いいたします。まずはKiNGさんの現在の活動内容を教えてください。

KiNGさん(以下、KiNG):今年78歳になる父 佐々木幸四郎が仏師として活動しており、そのアーティスト活動をプロデュースしています。父は幼少期から仏像彫刻をやってはいましたが、時代背景もあり、アーティストの道に進むのではなく、東京に出て一級建築士として活動していました。2011年の東日本大震災によって彼の中で死生観が変わったことがきっかけとなり、「アーティストとしての自分」を思い出したようで、建築士をリタイアした後に本格的に仏師の活動を始めました。父が66歳の時です。

赤木:66歳からアーティスト活動を始められたことに驚きです。

KiNG物ごとには、その人の持つ本質が時代と合わない、あるいは評価されないタイミングがどうしてもあると思います。ただ、やり続けることでいつか「時代に合うタイミング」が来るから、その時にまたやり始めればいい。父には今、そのタイミングが来ています。

赤木「自分の本質」に向き合うことは、シニアに限らず学生や社会人も含めて悩んでいる人が多いような気がしますが、お父様のお話を伺うと、自分の本質を追求するのに年齢は関係ないという力強さを感じます。

KiNGそうですね。いまや人生100年時代ですから、20歳前後から60〜70歳の間に違うキャリアがあっても良いのです。仮にそれが60歳以降だったとしても、自分の本質に合ったことをもう一度追求することに「遅いことなどない」と、父をみて日々感じています。

赤木働き方の多様化が進んだことや社会が変わったことも追い風になっているのでしょうか。

KiNGそうだと思います。いわゆる団塊世代前後の人たちが現役を過ごした資本主義の時代は、多くの人が99.99%できることをやっていたと思いますが、今はそうではありません。それは社会の基盤にも言えることで、例えば、私たちの生活を支える量子コンピュータや半導体は、0.00数%しか起きないような現象、つまり奇跡の積み重ねが生み出すテクノロジーによって成り立っています。これは社会の方程式が変わったことを意味しており、同じように、私たちの人生も0.00数%しか起き得なかったことに挑戦できる機会を持てるようになったということです。
 時代が変わればその変化に乗るべきだし、「奇跡でも起きない限りあり得ない」と思って自分の心に蓋をするのではなく、70歳でも80歳でも90歳でも、命がある限り挑戦すればいい。別の言い方をすると、来世がもしあるとするならば「次の人生で」と思っていたことが、今世でできるようになった、これこそがまさにAge-Wellだと思います。

資本主義の世界で生きながら、資本主義の世界で取りこぼされる価値あるものに目を向ける

赤木少し話を変えて、KiNGさん自身のキャリアの変遷についても教えてください。

KiNGもともとデザイナーやアーティストとして活動しており、紅白歌合戦や某有名アーティストの衣装制作など、1999年ごろからエンターテイメントど真ん中の世界にいました。

赤木そこからどのように現在の活動に繋がっていくのでしょうか。

KiNGとても煌びやかな世界に居続けた一方で、資本主義の世界では取りこぼされていることがあるということを常に感じていました。例えば父にとっての仏像彫刻のように、その人の本質から生まれた本来であれば評価されるべきものが、時代に合わないというだけで切り落とされたり、評価されない現実を目の当たりにしたわけです。
 一方で私は時代に乗り、タイミングにも恵まれ、とても良いところにポジション取りをしてきました。その過程で得たノウハウやエネルギーといった自分の資本を、資本主義の世界で取りこぼされていることに使うことで、そこに光を当て世に出したい。その思いから、自主制作映画のプロデュースなど、「表舞台に出てきていないが本来評価されるべきもの」に関わる活動を始めました。

赤木資本主義のど真ん中での活動と、その中では評価されないものに光を当てる活動。それぞれから得た知見がKiNGさんを介してポジティブに相互作用しているのですね。広範囲に活動を続ける中で資本主義の世界に居続けることには、特別なこだわりがあるのですか。

KiNG学生時代に母から言われた言葉があったからだと思います。今でこそ父の活動をプロデュースするようになりましたが、学生時代、両親は私が美大に行くことに大反対していました。母方の祖母と母も経済的に自立した家庭だったので、母には「アートなんてお金にならないとわかって美大に行くんだから、必ず自立できる道を見つけなさい」と言われました。この言葉がずっと頭に残っていたので、教員免許をとったりたくさんアルバイトをするなど、どうすれば経済的に自立できるかを、学生時代からずっと考えていました。

赤木資本の重要性は学生の頃から強く意識されていたのですね。お父様の活動を本格的にプロデュースするようになったきっかけは何だったのでしょうか。

KiNG父に限らず、私はプロデューサーとして参画するポイントを「千本ノックが終わっている状態」と決めています。アーティストの作風が決まっていて、ある程度周囲の人にも認められてはいるが、あと一歩のところで飛躍しきれていない。まさに、コップの水が溢れそうで溢れないところに、私が関わることで水が溢れる瞬間を作りたいのです。
 だから父のことも、最初から応援していたわけではなく、一緒に取り組みを始めたのはここ数年です。「彼は自分なりに努力して、仏師としてある程度のところまで到達した。あとは指数関数的な飛躍をするべきだ」と思ったのと、その方法が私には明確に見えていたので、取り組みを始めました。目の前にそのような機会が出されたということは、「私にやりなさい」という合図だとも思いましたね。
 だから理由はとてもシンプルで、親だから父だからではなく、一人のアーティストとして彼に向き合っています。

赤木KiNGさんからは、お父様の才能が十分に見えていたのですね。

KiNG人の本質から生みだされたものは、そのことに十分な価値があるため、作品に手を加えたり編集する必要がありません。私のプロデューサーとしての役割は、その価値あるものに目を向けて、それを世に出す後押しをすることなのです。
 私はたまたま選んできたものとタイミング、つまり運が良かっただけで、父の方が才能があると思っています。父は生まれたタイミング、性別、いろんなことが重なって今までできなかっただけですが、今は何歳になってからでも自分の本質を追求することができる時代。だから、私が彼を応援するのはごく自然なことなのです。

赤木お父様以外にも、プロデューサーの活動として80代のアーティストの方をYouTubeで発信していますが、それも似たような感覚ですか。

KiNGそうですね。出演いただいたのは多摩美時代の恩師である彫刻家の石井厚生先生で、私は学生時代からあの世代の凄さを間近で見てきました。18歳で入学して、石井先生は当時50代。Jeepに乗って、色気があって、圧倒的に勝てないかっこよさには畏敬の念しかありませんでした。今でも2年に一度、個展を開いていますが、どんどんかっこよくなるので「イケてるからもっと世の中に知られるべきだ」と毎回思うし、YouTubeでも取材をさせていただきました。

赤木YouTubeを拝見しましたが、KiNGさんは「この人のいいところを世に残してあげよう」ではなく、「世に残すべきあなたの最高の才能を見せてください」というスタンスだったのが印象的でした。

KiNGそうですね。御涙頂戴なんて一度も思ったことはありません(笑)。それに、今の75歳以上は学生運動世代だから、とても武闘派。経済も右肩上がりで発展した時代を生き抜いた人たちなので、超イケイケです。

赤木:今プロデュースしてる方たち、特にお父様の今後や目指す方向についてはどうお考えですか。

KiNG:彼らのゴールは私が決めることではありませんが、父の場合は、父が本当に作りたいと思っているコンセプチャルアートを作ることに、彼自身に挑戦してほしいと思っています。彫刻の制作は、重いものを持ったり体力が必要なので、もちろん父一人では難しいですが、父が自由に制作するために必要なサポートをしたいと思っています。

赤木これから次の挑戦に向かうお父様こそ、まさに弊社が提唱する”Age-Well”な生き方を体現されていると思います。KiNGさんがいなかったら、お父様も今のような活動はできていなかったのではないでしょうか。

KiNG制作のサポートをすることはもちろんですが、横に居ながら「やりたいことの言語化」をサポートできたことは、とても大事だったと思います。学生時代の父のプレッシャーのおかげで、私自身、抽象的に見えるものの意図やそれが選ばれた背景を瞬時に言語化するスキルは培ってきたので、そのスキルを使って父の気持ちを一緒に言語化してきたことは大きかったと思います。

ビジョンを具現化する道のりを共に歩み続ける

赤木ご自身のアーティスト活動、お父様や恩師の先生のプロデュースなど精力的に活動されるKiNGさんですが、今後、新しいコラボレーションやプロデュースの方向性はどのように考えていますか。

KiNGこれと言って決まったものはなく、全方位で関わっていきたいと思っています。ただ、いよいよ日本がやばいとも思っているので、日本のために何かしたいというのは心から思います。コロナが明けて、海外からのオファーもあるので、インバウンドも含めて活動範囲を広げていきたいですね。
 私が今活動拠点をおいているエリアはファッションの激戦地で、ありがたいことに国内外からの非常に稀な出会いがたくさんあります。その中で、遠くに憧れるのではなく、今目の前にあるチャンスを的確に最大化する方法を、いろんな人や世代を巻き込みながら模索していきたいです。その挑戦ができるからこそ、精一杯のチャンスをいただいていると思うので。

赤木多くの世代を巻き込みながらご自身に与えられた機会の最大化に挑むKiNGさんのこれからのご活躍がますます楽しみです。

KiNG私は一貫して、具現化、物質化を早めることにとても関心があります。この世の中は、奇跡がいくつか重なると現実化することが多くて、父のように「2〜3個整っていて、あと一押し」というものは、世の中にまだまだたくさんあると思います。
 それはつまり、今はまだビジョンでしかないもの、「あったらいいな」と思うものにあと2つくらいの条件を重ねることで具現化できるということ。機が熟しそうな中で来世を待たなくても、私がそれを具現化することで、今世でそれを一緒に見たいというのが私の願いです。それがより多くの、公共の人に還元できたら嬉しいと思います。

編集後記

約一年半前にお会いした時から、ずっと、KiNGさんの本質を探りたい!と思っていたので、今回こうしてお話を伺う機会をいただけて大変嬉しかったです。 Age-Wellとは、人生の後半でも果敢に挑戦をすること」であること。また、KiNGさんは「挑戦が最大化するように背中を押す」という方法で、Age-Wellな人生に伴走していらっしゃると理解しました。 KiNGさんがプロデュース作品や人を拝見するのが、ますます楽しみになりましたし、こちらのLabでもさまざまなコラボをしていきたいです!(赤木)

(インタビュー:赤木 円香  編集:安松 花子)