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2024年4月25日 Age-Well Design Lab

【事業者の傾聴インタビュー_vol.6】ダンスを通じて輝きが増していくシニアたち。Age-Wellを生み出すダンスの力とは。/ FIDA JAPAN・大前沙季氏、浅井利哉氏

 AgeWellJapan Labでは月に1回、挑戦と発見を通じてポジティブに歳を重ねる”Age-Well”を体現されている方、シニアの”Age-Well”な生き方を創る事業者へのインタビューをお届け。Age-Wellな生き方のヒントを発信していきます。

 シニアのダンス世界大会を創る―。今回お話を伺ったのは、ダンスを通じてシニアの心身の健康を目指す「ダンス健康クラブ」で、取り組みを統括する大前沙季氏とクラブメンバーのコンディショニングサポートを行う浅井利哉氏。お二人が所属する一般社団法人日本国際ダンス連盟 FIDA JAPAN(以下FIDA JAPAN)では、65歳以上のシニア世代を「GOLD世代」と呼んでおり、昨年9月には全国から集結したGOLDダンスチームの頂点を決める大会「FIDA GOLD CUP 2023」を開催。何歳になっても輝き続けるシニアの挑戦の場を生み出しています。

ダンサーを「シニア」として見ていない

AgeWellJapan代表・赤木円香(以下、赤木):本日はよろしくお願いいたします。昨年のAgeWellJapan2023では、ダンスチーム皆さんの圧巻のパフォーマンスを見させていただき、まさしく「Age-Well」そのものだと感じました。まずは、「ダンス健康クラブ」について詳しくお聞かせいただきたいです。

FIDA JAPAN・大前沙季(以下、大前):FIDA JAPANの事業の1つである「ダンス健康クラブ」は3年前に発足し、クラブに登録されているチーム数は現在30チーム、19都道府県になりました。「ダンス健康クラブ」に登録したダンスチームには、年に1度開催するダンス大会への出場をご案内するなど、FIDA JAPANの活動に参画していただける仕組みになってます。

赤木:「ダンス健康クラブ」に登録されている30チームそれぞれの人数やメンバーの皆さんの平均年齢はどのくらいなのでしょうか。

大前:チームにもよりますが、平均年齢は70歳を超えていて、70代が8, 9割ぐらい。女性が多いです。1番人数が多いところだと40名くらいの規模になります。

赤木:実際に皆さんのダンスを拝見した際、想像を遥かに超える「華やかさ」と「力強さ」に驚かされました。各チームのクリエイティビティを高めるために、FIDA JAPANでは、どのような取り組みをされているのでしょうか。

大前私たちとしてはGOLDダンサーの皆さんを良い意味で「シニア」として見ていないんです。FIDA JAPANでは、65歳以上のシニア世代を「GOLD世代」と呼んでいて、この「GOLD」という言葉には「Good OLD(古き良き/良い形で歳を重ねている)」という意味が込められています。全国のGOLDダンスチームの頂点を決める「FIDA GOLD CUP」では、「どのような観点でパフォーマンスを見るか」の評価基準を事前にお渡しします。具体的には、「振り付け」、「衣装」、「ヘアメイク」、あとは「表現力」や「完成度」など、 5つぐらいの項目です。年齢が高い人がいたら、その分のポイント加算もあったりしますね。

赤木:年齢によるポイント加算は面白いですね。この発想はどこから生まれたのですか。

大前:年齢を重ねると、ダンスを覚えるのは難しくなる。年齢が高い人がいると、合わせることも難しくなります。振付のレベルも上がるし、振り付けを考えることも高度になっていくので、ダンサーの年齢を加味した現在の評価基準を設けることにしました。大会前に評価基準を開示すると、「自分たちのチームはどうしたら勝てるのか」を各チームが考え始めます。ダンスのスキルが足りないと思ったら、衣装やヘアメイクで補おうとチームで協力して衣装を手作りしたり、ヘアメイクを用意したり。自立して考えていただく設計になっています。私たちが思っている以上に、皆さんの負けたくない想いが強いんですよ。同じGOLD世代で対決するので「他のチームがこの動きをできるなら、私たちにも絶対できる!」といったように、うまく切磋琢磨して高め合い、当日までにカッコ良く仕上げてこられます。

やりがいは「世界を見る手伝いができること」「ステップアップの瞬間に立ち会えること」

赤木:実際にGOLDダンスチームの活躍を間近で見られているお二人の「やりがい」についてもお聞きしたいです。

大前「ダンス健康クラブ」を担当して色々な場所へ足を運び、たくさんのチームと関わる中で感じるのは、皆さん一人ひとりがとても若く、エネルギーに満ち溢れているということです。ダンスを見てもわかるように、踊っている皆さん自身がすごく楽しそうなんですよね。コミュニティを作って、ダンスに夢中になっている姿を見ると、非常に尊い事業だなと思います。最初に会ったときと、大会のときとでは、ダンスの振りのレベルが格段に上がっていて。何歳になっても努力して上達して結果を出す、という過程が見られることは仕事の大きなやりがいです。

赤木:そうなんですね。これまでお会いした中で1番印象に残っている方はいらっしゃいますか。

大前:広島県に住む当時67歳の女性の方です。スタジオに通ったり遠征費用がかかることから、入会するかをずっと悩まれていました。ご本人の事情もあるので、「参加していただけるなら嬉しいです」とだけお伝えしていたのですが、その後少しして「大前さん、私、やっぱり悩むってことはやりたいってことだと思うの!」とおっしゃって、ダンス健康クラブへの入会を決められました。その心の動きの経過を見られたことが、すごく印象に残っています。

赤木:その間には何があったのでしょうか。

大前:何度も考える中で、自分が少しでもやりたくないと思ったら、「そもそも悩むことすらない」ということに気付いたようです。 それを一旦持ち帰って悩んでいる事実を見て、「本当はやりたいんだ」ということに気付けたそう。その気持ちに蓋をするのは良くないし、やれるだけやってみたいと話してくださいました。実際、去年の「FIDA GOLD CUP 2023」ではエネルギッシュに踊っておられ、ステージからの景色を見る手助けができた瞬間は、この仕事の意義をとても感じられた場面でした。

赤木:浅井さんはいかがですか。

FIDA JAPAN・浅井利哉(以下、浅井)私がワクワクするポイントは、自分も含めて人が「成長する瞬間」です。自分の関わってる人が少しでもステップアップする、その瞬間に立ち会えたときが最高で、やりがいにもなっています今年からはダンス健康クラブのオプションサービスとして、より長く・より効率よくダンスをしていただくためのコンディショニングサービスを企画しており、その視察やヒアリングに行く機会が増えました。行く先々で皆さんにお会いすると、みっちり練習されていて、「あれができるようになった」というお話を聞いたり、逆に「もっとこうやって早く動かしたいけど、全然カラダが追いつかない」や「ここが痛いけど、どうしたらいいの」と相談されたり。皆さんの成長に伴走しながら、成長の瞬間に立ち会えることが、私自身のワクワクややりがいそのものと改めて実感しました。

Age-Wellなシニアを増やすために必要なのは「優しいサービス」ではなく「やりがいのあるサービス」

赤木:現在の活動をどのように発展させていきたいか、今後の展望をお伺いできますか。

大前ダンスで健康寿命を伸ばそうという取り組みの中で、FIDA JAPANの活動を世界のモデルケースにしたいと思っています。そのために、まずは日本全国47都道府県に各チームを設立して、日本にはこんなにエネルギッシュに踊れるカッコ良いGOLDがいることを世界に発信したいですね。そして日本だけでなく、海外でもGOLDチームを作っていく。こうして日本から超高齢社会のモデルケースを生み出していきたいと思っています。

浅井私は「カラダづくり」の観点から、現状をなんとかしたいという想いがあります。「シニアは怪我しやすいから安全第一で」とか「怪我や病気がある場合はとにかく安静に」と言われることがとても多いので、「シニア=体力がない」「シニア=怪我しやすい/悪化しやすい」という決めつけを無くしたいです。地元のフィットネスクラブで働いていたときから、パワフルでアクティブなシニアをたくさん見てきたので、シニアの皆さんにもその周囲の方にも、「ダンスやスポーツはもちろん、その他の分野でもっとカラダを動かしていいんですよ」と伝えたいです。世の中には「マイナスをゼロにする施策やサービス」が多いですが、ダンスやスポーツはもちろん、その他の分野でも「ゼロからプラスの状態に持っていく」プログラムやサービスがもっと増えてほしい。その先に、アクティブかつAge-Wellなシニアで溢れる未来が創れるはずと信じています。カラダを最小限で動かす安心な「優しいサービス」ではなく、シニアが本来求めている「やりがいのあるサービス」を提供する必要があると思います。

赤木:「優しいサービス」ではなくて「やりがいのあるサービス」。これは弊社が二俣川で運営している多世代交流スペース「モットバ!」のコンセプトそのものです。地域系のコミュニティスペースだと多いのが「ほっこり」や「あったかい」というコンセプトなのですが、弊社では「充実感」と「疲労感」をすごく大切にしています。「シニアは怪我しないように」とか「安静に」みたいなことが言われがちですが、「楽しくてちょっと疲れる」 ところに「ワクワク」があるんだと思います。とはいえ、実際GOLDダンサーの皆さんは怪我をされないのですか。

大前:あることにはありますね。でも、皆さん踊りたいから戻って来られます。「膝が悪くなった!」「腰が痛くなった!」という声ももちろんあるのですが、やっぱりダンスをしに戻られますね。

赤木「目標」や「居場所」があれば、必ず「再帰」するんですよね! 本当に大切なことです。

歳を重ねるごとに輝きを増していくシニアたち

赤木:「挑戦と発見を通じてポジティブに歳を重ねる」という価値観は、まさに「Good OLD(古き良き/良い形で歳を重ねている)」という言葉の定義と大きく重なる部分があると思うのですが、最後にお二人が考える「Age-Well」について教えてください。

大前:日頃「Age-Well」を体現されている方々とお会いする中で思うのは「年齢ってなんなんだろう」ということです。私はGOLD世代のダンスを見てきて、その答えが「心の在り方」だということに気付きました。例えば「つけまつげ」は若者がつけるものと思われがちですが、全くそんなことはなくて。GOLDの皆さんは「つけまつげ」を何枚もつけて、真っ赤なリップを塗って、網タイツを履かれます。他にも、ウィッグを被って激しく踊って、ヘアメイクも派手なギャル風だったり。そんな皆さんの姿を見て、「年齢」は全く関係ないと思いました。だからこそ思うのは、「何歳」という表現ではなく、ダイヤモンドのように「カラット」といえばいい、そうなってほしいと思います90歳の人を表現するときに「私は90カラット!」のように。私が日頃、皆さんと接してる中で感じる「歳を重ねるごとに輝きを増している」というのが、Age-Wellだと思います。

赤木:「歳を重ねるごとに輝きを増しているから、○○歳ではなく○○カラットにすれば良い」って本当に素敵です!

浅井私が考える「Age-Well」な人は、○○したいという欲求があって、それを満たすために挑戦している、ワクワクオーラ全開の人。自分を探求して、好きなこと、やりたいことをしながら歳を重ねる生き方が「Age-Well」だと思います。 加えて、自身の経験からは「Age-Well」=「ダンス」かなとも思ってます。というのも、「ダンス」はまさしく「Age-Well」をデザインしていく上で重要な「ポジティブな自己認識」に繋がると思っていて。ステージに立つと、自分が主役だと感じられる瞬間を誰もが経験できるんです。ステージ上の全ての表現が個性として認められ、好きなことに集中していられる。自分を正直に表現できて、堂々と自分らしくいられる。何をやっても認められ、多様な繋がりが生まれていくこのカルチャーは、やっぱり魅力的だなと思います。ダンスに関わっていくと「自分で振付を作りたい」「もっと上手くなりたい」「仲間と一緒に大会に出たい」「綺麗になりたい」のように「 ○○したい」という欲求が次々と出てきて、新たな挑戦や発見、自己探求に繋がっていくんです。まさにダンスは「Age-Well」のキーではないかと思います。余談にはなりますが、自分たちが65歳になっても今と同じように楽しめる環境/仕組みを作っているんだと考えると、ものすごくワクワクします。世界中でダンスに挑戦されている方、仲間やライバル達と、歳を重ねてもずっと一緒に踊っていたいですね。 

赤木:実際にGOLDダンスチームのパフォーマンスを見て、そしてお二人からお話を伺って、ダンスがいかに「Age-Well」と強く結びついているかがよく分かりました。本日はありがとうございました。

取材後記

Age-Wellをいかにデザインしていくか考える中で、本日のお話からは「ダンス」がシニアの輝きを強める鍵となることを感じました。AgeWellJapan2023のステージで披露していただいたパフォーマンスは、見る人に元気を与え、何より「こんなにもカッコ良い歳の重ね方があるのか!」とAge-Wellの価値観そのものを多くの人に肌で感じていただく機会になったと思います。同世代で構成されるチームメンバーと切磋琢磨する練習過程や自分たちで仕上げるヘアメイク・衣装といったダンスパフォーマンスの特徴からは、弊社が運営する「もっとメイト」や「モットバ!」とはまた違ったAge-Wellのデザイン手法を学ぶことができ、新たな気づきを得ることができました。歳を重ねるごとに輝きを増していくGOLDダンスチームの「65カラット」や「70カラット」のダンサーの皆さんのご活躍を応援しております。

(インタビュー:赤木円香 編集:村田凜)